我のイカリ
秋ごろだっただろうか。
母が出勤前に、パン屋に寄ってから、お店に来た。わたしは出勤済みである。ロング勤務のときのこと。
母はなぜパン屋に寄ったのか。
いつもお世話になっています、というお店への差し入れであった。
お昼の人は、どれにしようかなあ~と、迷って選んで持って帰ってくれた。
その後、出勤してきた夜の人間は「ホットケーキちゃんのお母さん、差し入れ持ってきてくれたのね」の一言のみで。触りもしなかった。
目敏く食べたり確保したりするような人間のくせに。触りもしなかった。
翌日、出勤すると。違うお昼の人が、各々ひとつ持って帰ってくれていた。数が減っていた。
出勤してきた夜の人間は触りもしなかった。
結局、夜の人間の数だけあまった。
カチカチになったパン。
母がどうやってパンを選んだのだろうか
母はどういう思いで差し入れしようと思ったのか
母はどういう思いでパンにしたのか
どんな思いでお店まで来て、どんな思いで差し入れを渡して
そんなことを想像すると、怒りを通り越して、憎しみがわいた。去年の秋ごろのことである。
あまったパンを母に隠して持って帰った。
祖母に頼んでわからないように、なんとかしてくれと。
可愛らしいパンであった。
そのパンをどんな思いで選んだのだろうか。
そう思うと、今でも憎しみがわく。
どこかの記事で書いただろうか。
あまりの憎しみに書けなかっただろうか。
やつらに何かされて、堪忍袋の緒が切れるたびに。こういうクズのやり口を思い出す。
そう言うと、まっとうなクズさんに失礼か。
おばあちゃんでもおじいちゃんでも。
娘さんでも息子さんでも。
仲良しの親戚やいとこ。兄や姉、妹や弟。
旦那さんやお嫁さん。両親。
近しい人が自分の職場に差し入れを持っていく。
その差し入れを無惨に扱われる。
みんなどんな気持ちになる?