馬鹿げているかもしれない
愛犬くんは。わたしが落ち込んだとき、おしりをくっつけてくる。ぺろぺろと舐めにくる。
顔を覗きにくる。おもちゃを持ってくる。
いつもと違うと心配そうにする。楽しそうだと一緒にはしゃぐ。常にわたしを見て、心の中を察する。
まだベビー愛犬くんだったころ。1さいにもなっていない。生まれて半年も経っていない。まだまだからだもちびっこ。生まれてたった数か月。
とても悲しいことがあった。座り込んで大粒の涙を流した。ぼろぼろと流した。拭っても拭っても。
遠くでいたずらをしていた愛犬くん。走って、わたしの足と足の間に入ってきた。泣き止むまでずっとくっついていた。
泣き疲れて眠くなった。まだまだ赤ちゃん。一緒に寝る、じっと座っている、そんなことはできない。
試したことがあった。ベッドに乗せても、じっとしてはいない。愛犬くんにとってはおもちゃがたくさん。ぬいぐるみや毛布、布団やまくら。すべてがおもちゃ。そんな愛犬くんが。泣き疲れて眠くなったときだけは、一緒にじっとくっついて寝てくれた。何時間も。わたしが落ち着くまで。
愛犬くんは。嫌なことがあると「わん」と抗議する。心から嫌なことは噛む。だけど、かじる程度。怪我などしない。
しつけがなっていない。そうかもしれない。確かに。噛むなとしつけていない。鳴くなとしつけてもいない。
ベビー愛犬くんは、ほんとうによく噛む赤ちゃんであった。赤ちゃんだからこそ加減がわからず痛いほど噛むこともあった。遊んで噛むこともあったし、おしゃぶりのように噛むこともあった。
確かに。噛むなとしつけていない。噛ませていた。
よく鳴く赤ちゃんであった。嫌なこと、楽しいこと、訴え。よく鳴く赤ちゃんであった。
確かに。鳴くなとしつけていない。
でも。成長とともに。むやみやたらに噛んだり鳴いたりすることはなくなった。ほんとうに嫌なときに噛むだけで、普段は一切噛まない。
鳴くときも。お外がいつもと様子が違ったり、嫌なことがあったり。むやみやたらに鳴くのではなくて。まるでお喋りをするかのように、理由があって鳴く。
鳴く、噛む。ある以上はしつけがなっていないのかもしれない。
けれど。わたしは。愛犬くんはとても賢いと思う。
鳴く理由、噛む理由。考えてみれば。もっともではないか。
わたしは。愛犬くんはとても賢いと思う。
こんなにも人の心がわかるのだから。
人は人が世の中の生き物の中でいちばん、優れていると思っている。
確かに。鳥がパソコンを作れるか?そういう意味では優れているのかもしれない。
そんな世の中のどの生き物よりも優れているはずの人が簡単にできないこと。
それは愛犬くんが当たり前にできること。
人の心に寄り添って。人を傷つけない。
支え、慕い、寄り添い、癒す。常にそばにいる。
それは物質的な距離ではなく。心の距離。
心をいつもそばに置いておいてくれる。
努力してしているのではない。当たり前にしているのである。
人は努力してもできない。
人は人を平気で傷つける。
愛犬くんは。嫌なことがあると。わんと鳴き、軽くかじる。「軽く」かじる。つい、反射で強くかじろうものなら、すぐに口を離して、ぺろりと舐める。
愛犬くんは。歯をむいたことはない。うーと威嚇したこともない。お家に来たときから一度も。
世の中のどの生き物よりも優れていると思っている人間たちはどうだろうか。
わんと鳴くだけでなく、歯をむいて、うーと威嚇して攻撃して、指をちぎるほど、出血するほど噛みつくだろう。平気で。
世の中のどの生き物よりも優れていると思っている人間たちは、人の悲しみ、人の喜びなどわかりはしない。
犬だってほんとうのところはわかってはいない。けれども、なぜわかるのか。それは、人の心を一生懸命、全力で観察して寄り添っているから。
世の中のどの生き物よりも優れていると思っている人間たちよりも、その人間たちが人間よりも下だと思っている生き物の方が、こういうこと当たり前にできる。
馬鹿げた記事だろう。人間が一番優れていると思っている人間たちにとっては尚更。
でも、そんな人間には、わかりはしない。
昔、飼っていたインコだって、一生懸命、わたしの髪の毛を毛繕いしていた。帰ると、飛んできた。
ピアノを弾くと一緒に鳴いた。
インコですら。常にそばに心を置いておいてくれた。
人間には言葉があって。意志疎通も楽にできるはずなのに。
犬やインコなんて、お互いに何がなんだかわからないはずなのに。
人間の方が人の心はわからない。わからないのではない。わかろうとしない。
愛犬くんは。とても優しくて頼もしくて賢い生き物である。
賢いの種類は2つある。
ひとつは知能。算数ができるか英語ができるか国語ができるか。そういった賢さ。
もうひとつは観察力。相手が何を考え何を感じているのか。自分はどういった行動をすべきか。そういった賢さ。
確かに。ひとつめの賢さでは人間は優れているだろう。
でも。人の心を考え寄り添う能力は劣っている。
こんな考えは馬鹿げているだろう。
でも。外にでるたび。外で人を見るたび。外で人の話を聞くたび。外で人と接するたび。
愛犬くんは。なんて賢いのだろうと思う。
人の優しさなんて。所詮は自分のため。
愛犬くんの優しさは、一生懸命全力で相手をおもうが故の優しさ。
人間よりも劣っていると思っている生き物が、こんなにも簡単にできることを。
人間よりも劣っていると思っている生き物よりも優れていると思っている人間が、簡単にできない。
なにが優れている。
100%、文句もないほど優れてから、優れていると思え。
馬鹿げた考え、思いであるのは重々承知。
今日はブラックホットケーキでした。
外で人間に疲れて嫌になって帰ってきて
愛犬くんと接しているとね(^o^;)
こんなこと思ったり。
おっと…文章がむちゃくちゃだ…。