トンネル
トンネルに入った。途端に前方が崩れ進路が絶たれた。
退路は、と振り向く。途端に崩れ退路も絶たれた。
道具など何一つない。あるのは自分の身のみ。
さて、どうする。
進路の崩れを手入れしたとて、出口まで無事かどうかはわからぬ。しかし、退路の崩れを手入れすると、すぐに外に出ることができる。なぜなら、トンネルに入ってすぐに退路が絶たれたのだから。
よし、退路の崩れをなんとかしよう。
道具など何一つない。あるのは自分の身のみ。手を使い足を使い全身を使い、崩れを壊す。泥だらけ、埃だらけ、土だらけ、砂だらけ。爪が欠けた。傷ができた。痣ができた。しかし、何の進歩もない。
ふと、思う。
出られないのならば、何ゆえ足掻く必要があるのだ。何ゆえ抗う必要があるのだ。手を尽くしたとて進歩はない。ならば、身を委ねれば良いのだ。見えるか見えぬか、わからぬ出口を目指さずとも。目を閉じ、身を委ねれば良いのだ。
眠ってしまえば何も感じぬ。