父親
今週のお題「おとうさん」
あなたも被害者だった。人生のほぼすべてを無駄にしたのだ。わたしも同じ人生を歩んでいる。
母親と出会ってから幸せだった時間は少ないはず。あなたは被害者のまま、救われず死んだ。
大切な時、側にいてほしかった。
娘があんたと同じ道を目指してるよ、とリハビリ中に担当PTに言っていたそう。誇らしげに。
結局、わたしは辞めました。
花嫁姿、見せたかった。彼氏を紹介したかった。孫も抱かせたかった。車を運転する姿も見せたかった。お酒を飲む姿も。うつになったわたしも。それなりに稼いでる姿も。大人になった姿、見せたかった。
あなたは知らぬところで死にました。
事後報告でした。死因も知りません。命日も知りません。
もちろんお墓も知りません。
急に奪われました。あなたの娘と息子に。
父親というものを最後に奪われました。
半分が同じ血筋だと思うと自分の肉体ですら憎いほどです。
わたしは今もう何もありません。
ただ終わりを待っている。
初めて小さいわたしを抱いたとき、こうなるとは思いもしなかったはず。
あのわたしは、結局こういう人生となりました。
あなたも被害者だった。今になって理解しました。
お互いに幸せな人生、歩む権利はあったはずなのにね。
お互い、何をしたんだろうね。
今だったら、こんな話もできただろうに。