のんびりdiary

日々、思い悩み感じたことを綴ります

むかしばなし

学生の頃。

授業をさぼって学校の裏でタバコを吸った。
さらのタバコを開けて火をつけた。
一口吸う。すると。

右からバイクに乗ったおまわりさんが……。

めんどうなので、ぽいっと排水溝にすてた。

おまわりさんは通りすぎた。

でも、通りすぎたおまわりさんが左から戻ってきた。

「見たぞ」

「気のせいちがう?」

「いや、見た、見えた」

「ばれた?」

「ばればれや」

「動体視力良いねんなあ……」

「訓練しとるねん、ほらタバコ出し」

「…………どうぞ(くそっ、あけたばっかりなのに)」

「いくつ?」

「じゅーはちー(あとちょっとでね)」

「学校は?」

「ここ(うしろを指さす)」

「授業は?」

「気が向いてさぼった」

「あらら、さらやん、タバコあけたばっかりで残念でしたー」

「あーもったいないわあ………」

「そりゃ、そうやろな」

「ほんまやで……で?どーすんのー?」

「さあ、どうしようかな」

「もう……なんやそれ」

「なんかあけたばっかりでかわいそうになってきたわ」

「そやろ?なんか運が良いのか悪いのかわからんわ……。なんで通ったんよ」

「巡回ルートやからなあ」

「……そやろなあ」

「はい、返してあげる」

「…………?」

「俺はバイクで通ったけど見えんかったということにしてあげる、上手いこと排水溝に捨てたなあ」

「いや……仕事やろ?見つかったものは仕方がないもん。落としたと思うことにするわ。あげる。」

「次は知らん、次からは上手いことし」

「いいの?」

「取るぞ?」

「それはそれで落ち込むわ」

「俺はバイクに乗ってて見えんかった、わかった?」

「うん、助かる……ありがと」

「次の授業は出るんよ」

「……がんばる。……巡回がんばって」


最後に笑ってバイクのおまわりさんは去った。

若い若いお兄さんであった。
威圧感のない、普通のお兄さんであった。

尋問的な会話でなくて、普通の学生の子供相手に対する柔らかい会話だった。

顔は覚えていない。

だけど。このおまわりさんのことは覚えている。

タバコを返してもらったのは、ラッキーと思ったのは確か。

それが主な理由だから、で覚えているわけではない。

きっと。自分も学生のころにいろいろとやったんだろうなあ。挫折なしにおまわりさんになったのではなくて。いろいろと悩みながら、その末におまわりさんを目指したんだろうなあって。
そんなおまわりさんであった。

それが印象的であった。

返してくれたのもびっくり。補導も、連絡もされることなく去っていったのもびっくり。

なんだろうね。いろいろとあったかかったおまわりさんでした。

今は何をしているのかなあ。
そのあったかさ、まだ持っててくれるとうれしいなあ。


ちなみに。中学のころにもタバコ見つかってね。
下手なのよ、隠すの。

そのときは。追っかけられたよ。
そして捕まって制服やカバン引っ張られて。

そうされると、なんだか逃げてやる!ってなるのね。

カバン捨てて。車通ってる車道に出てやった。
そうなると、おまわりさん、追っかけられないのね。

車通ってる車道に出るとは思わなかったんだろうね。クラクションうるさかったなあ。
別に死んでもいいやってね。なんにも考えずに車道に出たなあ。

毎日、家でも外でもリスカしてた時分。
毎日、制服のシャツは血まみれだし。傷は絶えない。治る前に傷が増えていく。
手首のスペースがなくなって、どんどん上へ上へと増やしていって。鎖骨下あたりまでいったかな。
今でも残ってる。
上へ上へと増やしていくと、下から治っていくんだよね。だから、下から上へ上へ。毎日、毎日。

そんな時分だから。別に死んでもいいやって思ってた。
結構、自虐的だった。だから、平気で車道に出たんだよなあ。

その後、おまわりさんがどっかへ行って。
やれやれ逃れたか……と家に帰ったら。

母親が構えていた。

おまわりさんが学校に連絡して、学校から家に連絡が来たんだっけ。

いや……違うな。

やれやれ逃れたか……と場所を変えて一服したら。
運悪く学校の先生が通ったんだよ。

そうだ。そうだった。

そして、説教くらって。

学校が家に連絡したんだっけ。

とにかく。家に帰ったら。
母親が構えていた。

タバコ見つかるって、どんだけどんくさいんだか。

どっちの時分のおまわりさんも忘れられないけど。

中学のころのおまわりさんと、18のころのおまわりさんと、記憶の引き出しの場所が違うんだなあ。

あのころ。あのお兄さんおまわりさんみたいにされてたら。どうしてたかなあ。

結果は同じか。

家に帰ったら母親が構えているのだ。

おまわりさんって、嫌いだけど。

あのお兄さんおまわりさんは別だ。

懐かしい話である。

今はもう。外で関わる人間は嫌な人間ばかりなので。

外であんなあったかい気持ちにしてもらえる人間には、もう出会わないんだろうね。

ありがとう、お兄さんおまわりさん。
あのときの、あったかい気持ち。もう7~8年経つけど。まだ覚えているからね。